ところがある日、恵さんは、行かないでと叫び続ける犬と猫たちに、ドアをいったんは閉めたものの、お前たちを残して仕事になんて行けるものか。
と、またドアを開けて犬たちの首を抱き締めました。
でもこれからが傑作なのですが、
「なーんちゃって。じゃね。いってくるね」
・・・つまり犬たちを一度は喜ばせておいて、冷たくすることにしたのです。
実は、これには彼女の思いがありました。
ムクのようなことがあっては、耐えられない。
第一、これでは仕事にならないと気付いたのです。
ずっと犬や猫のことばかりが気になるからです。
ペットから自立すること。ペットも自立すること。
これが恵さんがとった選択でした。
犬たちも何度かだまされるうちに、すっかり「またかいな」という気になったらしく、
今までのようにいつまでも泣いていたりはしなくなりました。
仕事に生き、ペットとともに生きる。
恵さんは今もクロとケリー、そして猫3匹と暮らしています。
あ、ご主人がいることをつけ添えておきます。
そんな妻を見て、ご主人は、黒い大型犬を買ってきました。
黒いからクロ。まったくのんきな名前の付け方ですが、ご主人が思うほど、彼女の傷は小さくなかったようです。
なかなか元気になれない。
ご主人がしたことは突飛なことでした。
茶色の大型犬ケリーと子猫3匹を彼女に与えたのです。
否が応でも、散歩や食事、トイレの手当てなどいなければなりません。
2頭と3匹ですから、てんやわんやです。
彼女はいつしか、また笑顔で仕事をできるようになりました。
ご主人の勝利ですね。
さて、彼女は根っからの動物好きですので、すっかり夢中になっていましたが、
ご主人が出かける時には静かにしている5匹が、恵さんが出かけるとなると大騒ぎです。
恵さんはそのたび、必死にドアを閉じました。
(ペットロスから立ち直る)続く